yagiozi’s blog

仙台市八木山在住おじさんのブログです

夜の子③

「コンビニから思っていたけど、お前整った顔してるよな」

「化粧してきたからw」

 

肌の質感やコントラスト云々ではなく、可愛い顔という表現も違う。

目、鼻、口、眉 個々の配点が高いというよりは、それぞれが

あるべき場所にうまく収まって全体としてデザインが出来上がっている。

 

暗がりの中で、その造形美を再確認しようとまじまじ見ると

「んな見んなw」と照れた。

 

「大丈夫か?おっさんと二人でこんな暗がりで?」

オマワリさんが来たらアウトな気がする。

「サブちゃん弱そうだから大丈夫でしょw」

「失礼な、これでいて筋肉質なんだぞ」

「うっそwヒョロヒョロじゃんww」

「スマートと言え。スマートと」

「スマートなのはスマホだけだろw私の肉分けてやるよww」

「え、太ってないじゃん」

「脱いだらすげーんだぞww見るか?w」

「えっ?いいの?」

「5千円なww」

「じゃあいいや」

「おいwそんぐらい払えよ!金持ってんだろw」

「5千円あったらココスで豪遊するわ」

「私の裸ココス以下かよww」

「おめー裸なるつもりだったのかよ、とんだ痴女だな」

「うるせww虫に刺されるからなんねーよw」

 

 

 

この場所に来るまで、アキラとのチャットのやり取りを思い出していた。

少し考え、察しがついたので聞いてみた。

 

「前言ってた、学校に来なくなったA子ってお前だろ」

 

「――あれ、言ったっけ?」

表情は読めないがアキラの声のトーンは変わっていた。

 

「やっぱりか。聞いてはないよ」

 

言葉を選ぶ。

いや、目についた言葉でいこう。飾らず。シンプルに。

 

「つらいよな」

 

 

 

 

「…ん」

小さく返事したあと。

彼女は黙って、そして泣いた。

 

パーカーのフードをかぶって、唸るように泣いた。

 

泣き止むまで、星を見ることにした。

背中を向けて、初めて会った女子高生の泣き声を聞きながら

夏の星座を眺めた。

 

歳を取っても未だに分からない。

泣いている女性になんて言葉をかけるべきか。

男女の関係だったら、抱きしめて頭を撫でてあげられたのかもしれない。

でも、そんなことはできない。

 

アルタイル、ベガ、デネブだっけかな。

 

夜のテンションと酔いのせいか、気付いたら一人語りを始めていた。

 

一番好きなものって誰にも教えないんだよね。

 

私もいくつか八木山で、見晴らしのいいお気に入りスポット知っているんだけど、

多分、この先誰にも教えることなく、そんでいつの間にか誰かのお気に入りスポットになっちゃって、自分のお気に入りじゃなくなるか…

あるいは工事でその場所がなくなっちゃったりするんだと思う。

 

昔からそうでさ。

友達とお泊りとかすると「クラスの誰が好き?」とかって話になるじゃん。

あの手の場でも絶対一番好きな子は言わなくてさ、二番目に好きな子を言ってたの。

好きな子ってのは嘘じゃないし。

なんで言わないかっていうと理由はいくつかあるんだけど、一番は自分だけが知っている良さを、他の奴に知られるのが嫌なんだよね。

踏み荒らされたくないっていうか。独占欲みたいなもんかな。

半端な「好き」の奴らにあーだこーだ口にしてほしくないのよ。

だから、前チャットで相談受けたときもアキラのこと中途半端な好きで告白するぐらいなら、その言葉はしまっとけ って思った。

 

店とかも同じだよね。恋人とだけ行きたいお店とか、気の知れた友人とよく行く店とか、そうした場に仕事のお付き合いの人は来てほしくなくて。

何なら閑散としてるぐらいがちょうどいいんだよね。

閑散としすぎて潰れた馴染みの店もあるけど。会社の人にもウチ紹介してよーなんてマスターに言われたけど、しなかったからかな。なんて。

 

独占欲だけじゃなくて、否定も怖いんだよね。

自分の中の一番を発表した時に、それが誰かの二番あるいはもっと下だったら嫌じゃん。

自分が世界知らないみたいで。

「えっ、お前あれが一番いいと思っているんだ?マジ?」

みたいな。

仮に自分が "相手の一番も知った上での絶対評価" だとしてもだよ。

「いや逆にお前アレが一番はねーわ」なんて、そこで相手とバトりたくもないし。

かといって、自分の一番を卑下するようなコトも言いたくないからさ。

 

ずーっとそんなんで生きてきたら、誰かといると「自分が何が好きか」で動けなくなってくるんだよね。

最初は自分の一番に申し訳なさを感じていたりしてたんだけどさ。

行動が思考を司るっていうのかな。一番を押し殺していると、一番に対する拘りが希釈されていって、一番じゃなくてもよくなっちゃうんだよね。

 

大人になるってそういうことかな、なんて思うよ。年取ると。

 

だからかな。

夜、一人で歩くのが好きなのは。

 

一番好きな音楽を聴きながら、一番好きな場所にいって、好きに飲んで、好きに体を動かして。

自分の好きを行使し放題。

自分の好きに正直でいられる。

 

 

「それな」

ようやく声を出したアキラはすげー鼻声だった。

 

「私は『好き』を共有したいから一番好きを教えないってのは分かんないケド」

 

「でも、夜は一番好き。朝も昼も嫌い」

 

そらそうだよな。朝も昼もみんな学校に行けている中、アキラは行けていないんだから。

 

そこからアキラとは夜の話だけで何時間話したろう。

 

「やっぱサブちゃん変なやつだわw」とアキラは私の話を面白がって聞いてくれた。

 

 

 

その日以来、アキラとは会っていない。

というかソシャゲでチャットすらしていない。

彼女がオンラインにすらなっていないからだ。

 

 

死んだのかもしれないし、学校に行けるようになったのかもしれない。

あるいは、あの日私は、夏の亡霊にでも出会ったのかもしれない。

色々話してスッキリし、成仏した。

 

そういうことにしておこう。

 

あの場所に行けば会えるような気もする。

 

好きを共有する か…。

どうやるんだっけな。

おじさん忘れちまったよ。

夜の子②

アキラとは夜に八木山の某コンビニ前で落ち合うことになっていた。

 

いつもならソシャゲのイベントで二人は仮想世界にいるはずの時間だが、今日は現実世界で言葉を交わす。

指定時間の少しだけ早くコンビニについたが、雑誌コーナーは立ち読みお断りの掲示がされており、しょうがないのでハイボールを一缶とチーズを買ってコンビニ前で待つ。

 

昼は遠慮をしらない太陽様がゴキゲンで外に出たくないが、夏の夜は季節と朝昼晩の組み合わせの中で最もつよい。

至高である。

 

夜風が気持ちいい なんて余裕があればよかったのだが、あろうことか私は緊張していた。

そもそもコロナ禍になってからテレワーク中心となり、人と話す機会も減っていることに加え、OFFの時間帯に見ず知らずの高校生と会おうとしているのである。

 

チャット上ではベラベラと冗談とジョークと戯言を並べ立てられたのに、はたして一回り以上年齢差のある男子高校生と何を話せばいいのだろうか。

 

まぁ、なるようになるさ。

 

なかなか、それとおぼしき人物が登場しないので、ゲームのチャットでアキラに

「コンビニ前にいるぞ」と連絡した。

 

オンライン状態のアキラからすぐに返信がきた

 

「僕ももう着いてコンビニの中にいますよ」

 

???

 

振り向いた先にいた女子は、コンビニのウィンドウ越しに口元に手を当ててニヤニヤと笑っていた。

 

――

 

「男子ちゃうやん」

ゲーム内のノリで思わず関西弁が出る。

 

「アレ、男子なんて言いましたっけ?w」

 

言ったとも。何なら男子だと思ってしょーもない下ネタをガンガン言ったとも。

覆水盆に返らずだ。

どうしてくれる小娘。

 

「一人称『僕』だったし、マジメ男子高校生かと思ってたゾ」

 

「不真面目JKですよw」

 

不真面目JKは夏だというのに長袖パーカーと長ズボンだった。

 

「暑くないのか?おっさんの方が若々しい格好だぞ」

まさかJKが登場すると思ってもいなかった私は、大学時代から着ているバンドTと短パンである。

 

「虫に刺されるからー」

「おっさんは抜かりなく虫よけしてきたけどな」

「おじさんの血まずそうだし、大丈夫じゃない?w」

「うるせ」

 

動揺こそしたものの、ゲーム内のノリで話せそうだったからひとまずは安心した。

 

「なんか買うか?おごるぞ」

「もう買ってるから大丈夫」

オーバーサイズ気味のパーカーからアキラは抹茶ラテ?を出して答えた。

 

「ね、知り合いとか来たら気まずいから別の場所行かない?」

「そうだな。おっさんオマワリさんにアレされかねないしな」

「アレ?」

私は両手首をくっつけて手錠されるジェスチャーをする。

「あー、名刺交換?」

「ちげーよ!逮捕だよ」

 

ゲーム内のノリも相当よかったが、なかなか上級者のようだった。

 

「いい場所があるんだけど」

「ココスか?おごるぞ」

「ココス時短でやってないじゃんw」

「あーそうか…じゃあどこで奢ればいいんだ」

「金で釣るなw あーさてはいつもそうやって…」

「やってません!」

 

なんやかんや漫才をしながらアキラが連れて行った場所は、八木山の某夜景スポットだった。

八木山には駅上のてっぺん広場の他に、いくつか夜景スポットがある。

本当に地元民しか知らないような。

そしてアキラに連れられていったその場所は私も何度か足を運んだことがある場所だった。

我々のような者たちのためにこっそりと用意された空間。

夜のその場所を知っているだけで、アキラは「我々」側なのだと理解した。

夜の子①

コロナ禍で飲みに行く機会が激減したせいかおかげか、去年の秋口から始めたソシャゲがある。

そのゲームではプレーヤーどうしのチャット機能が備わっていて、チャットを通じて同じギルト(プレーヤーが集まるチームのようなもの)のメンバーで仲良くなった人がいた。

 

アキラと名乗る彼は同く仙台に住むの現役高校生で、私の話を面白がって色々聞いてくれた。

一方で高校生らしい悩みも色々あったようで、自分がある女子生徒に告白したことをきっかけに、その生徒が不登校がちになってしまったと話をしてくれたことがあった。

 

コトの経緯は、女子仲良しグループ内のA子とB美。

アキラとA子は中学から交友があり、アキラはA子のことが好きだったそうだ。

アキラは自分で言うのもとは言いながらも、スポーツ万能で明るく、友人も多いスクールカースト的にはトップグループの一員だったそうで。

一方、A子とB美も女子グループの中でもオシャレ、運動部、陽キャラ、あるいは彼氏持ち などで構成されるトップグループに所属しており、A子はB美から「アキラのことが好きだ」という話を聞いていたそうだ。(その女子グループ内では周知の事実)

 

そんなことなど全く知らず、アキラはA子に告白を決行、そして撃沈。

理由について聞いてもその時は教えてもらえず、後々「B美を応援する立場だったから告白は受けられなかった」と知ることとなった。

 

A子はその一件のせいか仲良しグループを離脱。格下グループに移籍するでもなく、むしろ女子全体からハブられるような形になり(裏切者と呼ばれていた)、とうとう学校にくることもなくなっていったそうだ。

 

そのことで「僕はどうすればよかったんたんだろ。サブちゃんならどうする?」と意見を求められたことがあった。

※"サブちゃん"は私のゲーム中のプレーヤー名

 

アキラにA子のことをまだ好きか聞いたところ、アキラは「分からない」と答えた。

A子がハブられるようになってから、A子や周囲に対して何かしたのか聞いたところ「何もしていない」と彼は答えた。

 

「そんな半端な気持ちだったなら告白なんかしなければよかったんじゃないか」

と私は伝えた。

 

告白というのは、それまでの関係性を終わらせる行為だ。

当事者間だけの問題ではない。

周囲にいる者にも今後の関係性を明らかし、自分だけではなく相手の環境を変える。

結果がどうあろうが、それでも尚、好きな人を守るような行動をとれないのならば。

ただ一度の拒絶で心の火が消えてしまう程度のものならば、告白などしない方がよい。

そうしたことをチャットで彼に言った。

 

ゲーム上ではそうですよね、と短い返信があっただけでその時、彼がどう思ったかは分からない。

だが、後日「直接会えない?」と連絡が入ったので何か思うところはあったのだろう。

 

こうしておっさんは男子高校生と夜会をすることになった。

働き方改革

コロナ禍となってから弊社は働き方改革を強力に推進していることもあり、Web会議はもちろんのことテレワーク、フレックス制度やサテライトオフィスなど柔軟に取り入れて行っている。

 

それとは別で個人的に働き方改革をしていたところが私にはあり、というのが通勤やオフィス内の密を避けるために勝手に休日変更をしまくっていることだ。

 

土・日は朝と夕方の通勤電車はそこまで混雑せず、オフィスも人はガラガラである。

なので、水曜日あたりを休みにして土曜や日曜に出社することが昔からちょいちょいあったのだが、前回投稿した出来事がきっかけでN川にバレてしまった。

 

で、飯を奢ってもらう約束もあったので前回の日曜日にN川同伴で出社して飯を奢ってもらったまではいいが。

 

それがSちゃんの耳にも入ったようで(N川が言ったらしい)、次の休日出社の時はSちゃんも来ることになってしまった。

本人曰く、コロナが増えているから出社は控えたいものの業務内容を教えてもらううえで、色々直接会話できた方が捗るとかなんとか。

 

うーん…

 

懐いてもらっているようで大変ありがたく、その点で悪い気はしないのだが、反面素直に喜べない自分もいるのが正直なところである。

 

というのも、Sちゃん顔面偏差値的には「上」の部類に入るタイプで、最近真ん中分けで後ろにまとめていた髪を下したおかげか、殺傷能力?を増し社内ではツートップと呼ばれるようになっているらしい。(同期♂情報)

ちなみに、ツートップのもう一人も私の同期で、こちらはなかなかくせのあるタイプの美人。

最近は全く絡みがないが、昔はちょっとイベントがあったりもした。その話はどこか機会があれば投稿する。

 

で、かわいいは正義のSちゃんと日々一緒に業務もしていれば、独り身のおっさんとしては正直女性としても意識してしまう。

要するに、おじさん勘違いしてしまいかねない というだけの話ではあるのだが…

SちゃんもSちゃんで他の人がいる時には仕事モードの顔を使うのに、私とサシで私がちょっと雑談とかふるとすごいニマっとした笑顔で話すもんだから余計に…なのである。

 

Sちゃんルート入ればいいじゃんと思うかもしれないが、実は前職において職場恋愛でかなりイタい目を見ており、本当にそれだけは避けたい。

 

N川あたりとうまくくっ付いてくれないかなー。

 

そうしたら、おじさんが二人まとめてあちこち遊びに連れてってあげるのに。

 

とりあえず、Sちゃんと仲良くなりすぎないように気を付けながら、過ごしていこう。

若さゆえ

例年、8/13付近はお盆休みとして連休が常なのだが困ったことに今年は忙しい。

客も同じ担当のメンバーも休んでいるのに、私は出社だ。

幸い、ここのところ涼しく、むしろ上着を着なければ寒いぐらいなので、会社に出向くのは苦ではない。

 

日頃の運動不足解消も兼ねて、どうせ誰もいないだろうし広いフロア貸し切りで仕事をしてやろうと10時頃事務所に顔を出したところ新人N川がいた。

 

「おはよう」と声をかけると「おはようございます」と挨拶は返すものの、表情に余裕はなくそさくさとPCモニタにまた向かってしまった。

 

通常、弊社は新人に残業は基本的にさせない。まして、お盆期間は担当にもよりけりではあるものの、しっかりと夏休みを取らせる。

なのに、皆が休んでいる今日、新人が一人で余裕なく仕事とはどういうことか。

 

よろしくない。よろしくない。

そう心の声を唱えながらN川のもとに寄って声をかけた。

「夏休みはどうしたんだ?忙しいのか?」

 

振り向くN川の髪の毛はベタついて、うっすら伸びた似合わない青髭は長いことそこで仕事していたことを証明するかのようだった。

 

涙目になりながらN川は事情を話してくれた。

なんでも、直属の先輩Eが早めの夏休み休暇に入る前に「連休明けまで〇〇を終わらせておいて」とN川に頼んだらしい。

手順があったようで、その通りやればすぐにできる内容…と聞いていてN川は休暇に入る直前にその仕事を始めたのだが、どうも手順通りの結果にはならず、何ならデータを壊してしまったように見えるとのこと。

 

とりあえず、手順を一緒に見ながらN川がやったという作業を一緒にもう一度やってみることにした。

確かに手順はあるものの、この手順…非常にお粗末。画面のハードコピーを貼っただけのようなもので、文字の説明が少ない。

しかも古いパソコンでやっているからか、N川のパソコンで出てくる画面とは微妙に差異がある。私はそれなりに経験もあるので、説明不足なところは脳内で補完しながら作業を進められたが、N川には難易度が高かっただろう。

 

「良く分からないのに、とりあえず進めたの?」

「…はい」

「Eさんに聞こうと思わなかったの?」

「お休みのところ連絡するのも気が引けて」

 

色々と教育方針などもあるだろうから、ごちゃごちゃ口出ししたくはなかったが

「分からないことを聞きまくれるのは新人の特権だから、あまり遠慮しちゃだめだぞ」

とだけ伝えた。

 

で、二人で手順をにらめっこしながらそれらしいものが出来上がり、N川が壊したかもしれないデータもN川のパソコンの中に閉じたデータだったため、問題ないことも判明した。

 

全ての作業を終えて「ありがとうございます!」と礼を言うN川は、涙目になっていた。

正直、新人時代、休日にこっそり一人で出てきて吐きそうになりながら自分のトラブル対応をした記憶は過去に私にもある。

そんな時、私も別担当の先輩に助けてもらった。

 

「じゃ、私は行くからね」

「お礼にご飯でもご馳走します!」

「いや、自分の仕事があるから、離れるねってこと。もう遅いからN川はさっさと帰りな」

 

N川は申し訳ないですといって泣いた。それを見て私は久しぶりに声を出して笑った。

AM11時に会社に到着し、すでにPM5時を過ぎたところだった。

真夏の蝉にて

蝉が死力を尽くして鳴く声を四方八方から浴びながら、私自身も暑さに行き絶え絶えとなり何とか地下鉄の駅にたどり着いているそんな日々。

 

一方で、足元には鳴くことをやめ死を待つ蝉が蟻に体に蝕まれながらも声なく佇む。

そんな蝉を指で摘まんで木の幹に着けてやると、蝉はゆっくりと上へと這い上がりだす。

幼生だった頃の本能か、また飛ぼうとしているのかは分からない。

歳を重ねてから虫は苦手になっていたが、そんな小さな生き物の生と死のコントラストに美しさを感じるようになったのもまた歳のせいに思う。

 

以前、こちらのブログで青葉城址からの眺めを書いたことがあった。

青葉城址は日中は駐車場有料だが、夜間は無料で駐車することができる。

丑の刻、深夜の2時ぐらいにかつて青葉城址に行ったことがある。

街灯こそついているものの、流石に人気がなく。

ただ、高台から望む仙台の夜景は人の営みそのものであり、夜に蝕まれながらも働く人の生が明かりとなって見えるのであった。

 

私は社会人になってから何人か友人・知人を失くしているが、そのうちの一人は蝉だった。

彼は東京に行ってとにかく働いていた。

連絡をしてもなかなか応答はなく、深夜3時ぐらいに「ごめん仕事忙しくて」と返信が良く来た。

蝉であることを知って欲しくてあえてその時間に返信をしてきていたのかもしれない。

当時の私がそこまで汲むことができれば、そうはならなかったかもしれない。

 

働いて、働いて、働き尽くして…

鳴き疲れて地面に落ちる蝉のごとく彼は死んだ。

 

 

彼の葬式で誰かが「なんで死んだんだ」「ふざけるな」「生きていれば…」などと言っていて、感情をうまく整理できていなかった私はぶん殴りそうになった。

 

自分で自分の命を終わらせた人間の骨を前に、よくもそんなセリフが出てくるな。

てめぇは何かしてやったのか?

今出てきた言葉と同じように「生きていればいいことあるから死ぬな」と、苦痛だらけのこの世界に縛り付けたのか?

てめぇの寂しいとか悲しいだろ全部。エゴをもう浴びせるな。

 

本当にどうにかしてやりたいなら、生活の面倒を見てやれるぐらいの覚悟がなきゃダメなんだと思う。

生きることすら自己否定している奴に、死ぬことも許さないとか鬼畜すぎる。

私は、死ぬことも許したい。

自分に余裕があるなら、助けたい。

話を聞いてやって、生活の面倒も見てやって、私の金で一緒に旅行に行って。

 

死ぬな死ぬなの大合唱は、個の圧殺だ。

 

逃げるは恥と教育されてきたから、優しくない社会になってしまったのだ。

逃げたものは再び同じように戦えないと見なされるから、皆逃げることを恐れているのだ。

一度逃げたものは同じように本当に戦えないのか?

一度も逃げてないものは今後も逃げないのか?

何度逃げてでもしぶとく生き残った者や、戦場を変える中で活躍の場を見つけた者こそが格好いいんじゃないのか?

 

私の友達は「みんなの正義」に殺されたのだ。

 

今でもそう思っている。

 

どう戦えばいい?そんな正義と

昔話

小学校の頃、秘密基地をつくるのが流行りであった。

最初は家の近くに作るものの、見つかっては「邪魔だから」「危ないから」と父や祖父に破壊され、

もう少し離れた河原に→破壊→もっと離れた畑近くに→近所のおっさんに破壊…

とスクラップビルドを繰り返すうちにたどり着いたのは山。

 

とはいえ、草木が生い茂る場所は雨が降ればびちゃびちゃになるし、虫も出るし…で最終的にたどり着いたのが山の神様?のちょっとした御社、祠のところだった。そこは整地されて草木ももじゃもじゃではなかった。

 

何を思ったか私とその悪友は四畳ほどのサイズの御社を増築するような形で、勝手に木やお風呂マットのゴミ、ビールケースなどを持ってきて継ぎ足し御社兼秘密基地のような形にしてしまった。

 

そこで済めばよかった。

――いや、もう手遅れだったのかもしれない。

 

当時、仏像にはまっていて、新聞の仏像ページを切り抜きして仏像帳を作っていた私は御社の中にも何かかっこいい仏像がいるのではと思い…仲間がまだ基地に到着していない時にこっそり中を見たのであった。

閂(かんぬき)錠のようなものがあったものの、何故か子どもの手でも外れる仕様でありちょちょいのちょいーでぱかーんしたら、期待の仏像はなく字を掘った石?があるだけだった。

触ったりなんだりしたかは覚えていないが、その晩から謎の高熱に苛まれた。

 

何でも高熱のせいで脳炎のような状態になっていたそうで、夜中に一人で冷蔵庫を開けたり締めたりを繰り返したり、むくりと起き上がって存在しない誰かとペラペラ笑いながら話し始め、親が「どうした?」と聞いたらパタと寝たり…

とりあえず薄気味悪い状態だったらしい。

 

で、病院に行き薬ももらって数日して解熱後、御社秘密基地のことが友達経由で親に伝わったようで、親もバチが当たったんじゃないかと私を連れて同地区の寺に連行。

ちなみに、そこの寺の息子は同級生。当時はあまり仲良くなかったものの、気付けば今でも親交のある友人。

その寺の爺さん(今は死んでいる)はなんでも意識がなくなるような修行を過去に何度もしているらしく、祟りや霊障の類が"分かる"人だった。

その爺さんに見てもらうや「何触った!!」と大激怒。

泣きながら御社勝手に開けて…を正直に話したら親父にも殴られ。あれは痛かった。

 

最終的には、うちの家族、悪友3人とその親、寺の爺さん、親父さん、土地(御社)の管理人?、地区の寺の神主さん…他にも誰かいた

かなりの大所帯でその御社のところにいき何か"ごめんなさい"の儀式的なことをした。

 

小学校でも祟られた少年として悪い意味で話題になり、もののけ姫が流行った時には祟りをもらった男として「アシタカ」のあだ名も拝名するにいたった。

(あまり書くと身バレするかもしれないので控えておく)

 

とにもかくも、そんなことがあったので以後、秘密基地は一切作っていないし神仏的なものは信じていたりする。

 

 

そんな過去を踏まえ、現在の話に戻る。

 

先日の連休はそんな黒歴史のある地元に戻り、例の寺の息子と悪友のうちの1人の計3人で飲むことがあった。

我が家で泊まりで飲んだ翌日、皆で銭湯に行きその後、寺息子を寺まで送っていったのだが、そこで久しぶりに会った親父さんから言われたのが

 

「〇くん、また何か触った?」

 

全く無自覚すぎて何を言っているか理解できないでいたら、昔のように祟り的なものの気があるとのこと。

アレに懲りて本当に何にもしていないので、正直に話したのだが、寺の親父さん曰く、「前の山の神様的な奴よりももっとヤバい感じので…だけども悪い影響は発現していない」らしい。

寺息子は修行していないので全く分からなく「ぬーべーの鬼の手みたいだな」と呑気に言っていた。

 

念のため、昔やらかした山の神様のところに寺息子・寺親父・私のパーティーで行ってお参りし、寺でお祓い的なこともしてもらった。

 

それでも、私から溢れ出るヤバい奴は全く消えないとのこと。

で、この辺の神社仏閣でどうにかできるレベルじゃないし、実害もないのでとりあえず放っておけと帰された。

 

 

いや、気になるわっ!!

 

死ぬの?私!?何に憑かれたの!?!?

シャワーの時とか目つぶれないんですけど!!

夜トイレ行くとき家中の電気付けないと行けないんですけど!!

オリンピックをテレビで流しながら寝たいけど、夜ふと目覚めてテレビ見たら何かがテレビから…なんてことあったら嫌だし。

 

ふぇーん!誰かたしけてよー!!

こわいよー!

 

…怖いから俺、寝る。(次元大介風に)